ブロックチェーンって何?仕組みを分かりやすく解説
- Yukiko Ichikawa
- 2022年3月30日
- 読了時間: 13分

2021年は時価総額が史上最高値を更新するなど、マーケット全体が拡大した暗号資産業界。
ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨は、毎日の取引で数十億ドルを売り上げています。
金融情報サービスのブルームバーグは、昨年2021年11月に全暗号通貨の時価総額は3兆ドルに達したと報じ、これは金の時価総額を大きく上回っています。また、投資銀行のジェフリーズがCoinDeskの記事で報告したように、市場に新しく登場したNFTの時価総額は350億ドル(約3兆円)となります。
このように、市場は急速に成長しており、暗号資産やNFTの話題はニュースやSNSでよく目にする機会が増えたと思います。
NFTとともにビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨が成功している背景には、ブロックチェーンという技術があります。
ブロックチェーンは元々ビットコインのために開発された技術ですが、現在は他の仮想通貨のベースとなっているだけではなく、メリットが多いことからNFTや他分野での活用も注目されています。
金融、不動産、保険、ヘルスケア、政府、その他多数の業界をカバーし、毎週、新しいアプリケーションが登場しています。
なんとなく聞いたことはあるけど、「ブロックチェーンってなに?」「実際のところどう使うの?」となっている方も多いはず。
次世代の社会生活の基盤ともなる可能性を秘めているとも言われている「ブロックチェーン」。
今回は、ブロックチェーンの基礎知識や特徴、メリットについてわかりやすく解説します。
そもそもブロックチェーンって何?
ブロックチェーンは、分散型台帳とも呼ばれる情報を記録する新しいデータベースです。
取引データを「ブロック」と呼ばれる単位でデータごとに時系列で管理し、ネットワークの参加者同士で取引履歴を共有し、改ざん耐性を持つ生成された「ブロック」を「チェーン」のようにつないで蓄積する技術を指します。
また、ブロックチェーンの技術には、さまざまな暗号アルゴリズムを活用しているため、改ざんされにくいデータ構造を有しています。
わかりやすく言うと、「安全かつ、改ざんできないデータベース」と言うこと。
ブロックチェーンはどのように機能するのか?
そもそもブロックチェーンは、金融機関のような信頼された第三者を置かずに、ビットコインを支えるための技術として考案されました。
2008年10月31日にサトシ・ナカモト氏による論文が公開され、ビットコインブロックチェーンが稼働し始めたのは2009年1月のことです。
そのコンセプトは、銀行や政府機関などの「第三者を介さない」「決してダウンしない」「公正に取引を記録する」新たなシステムを作ることでした。
ビットコインとブロックチェーンは同時に誕生したためしばしば混同されますが、ビットコイン=ブロックチェーンではありません。ブロックチェーン はあくまでも技術であり、ビットコインは「ブロックチェーン技術で実現されるアプリケーション」です。
ビットコインを起源とするものの、ビットコインとは別のブロックチェーンが数多く開発されています。
ブロックチェーンでデータが作成される仕組みは以下の流れです。
情報またはデータをハッシュ化する。
ハッシュ化されたデータは、コンセンサスアルゴリズムによってブロックに格納される。
ブロックが追加されると、ブロックチェーンネットワークのすべてのノード(コンピュータ)が更新される。
1. 情報またはデータをハッシュ化する。
ブロックチェーンに記録された取引データが安全に保護されるためには、ひとつの技術である「ハッシュ」を知っておく必要があります。
ハッシュとは、データを通信する際に取引データを英数字の羅列に暗号化する技術のことです。
主にデータの偽造や破損のリスクを防ぐための技術で、暗号化するための計算式を「ハッシュ関数」、そして暗号化された英数字の羅列を「ハッシュ値」といいます。
データの送信者は、データから算出されるハッシュ値とともにデータを送信します。
受信者は、受け取ったデータをハッシュ関数によってハッシュ値に変換し、送信者から送られたハッシュ値と同じ数値であるかを確認することで、データが改ざんされることなく安全に届いたことを確認します。
もととなるデータが同じであれば同じハッシュ値が算出されますが、わずかでも不正に改ざんが行われていればまったく異なる数値が算出されるため、ハッシュ値を比較することによって、安全に取引することが可能となるのです。
2. ハッシュ化されたデータはコンセンサスアルゴリズムによってブロックに格納される。
コンセンサスアルゴリズムとは、「データの真正性を担保するルール」と言うことです。
取引(暗号資産の送付)について、その取引が正しいかどうかを多数で検証し合意を行っていく仕組みで、この仕組みのことを「コンセンサスアルゴリズム」と呼び、取引データを格納するブロックを「誰が作るか」を定義し、ルールにもとづいて作られた1つのブロックを「正しいブロック」として認める、というルールが作られました。
取引が正しいかどうかを多数で検証し合意を行っていくルールのタイプを表すのが、コンセンサスアルゴリズムです。
コンセンサス機構には様々なものがあるが、最も利用されているのは
「PoW」Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)と「PoS」Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)です。
3. ブロックが追加されると、ブロックチェーンネットワークのすべてのノード(コンピュータ)が更新される。
データが記録された「ブロック」はネットワーク上の複数のノード全体に分散し検証されます。
仮に1つのノードのブロックチェーンの中にある「取引履歴間のある取引」を改ざんしようとしても、その取引以降のすべての取引のデータが書き換わって変質してしまうため、ほかのノードに保存されている本来同一であるはずのブロックチェーンとの不整合により、そのブロックチェーンおよびノードの虚偽が発覚するため、一度すべてのノードで共有された情報を変更することは不可能に近いと言われています。
ここで、ハッシュ化されたデータが「PoW」Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)と「PoS」Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)を用いたコンセンサスアルゴリズムによってどのように検証されるか、より深く掘り下げてみましょう。
・「PoW」Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)
PoWは、新しいブロックをブロックチェーンに追加するために必要なもので、暗号資産(仮想通貨)におけるコンセンサスアルゴリズムの一種です。
ビットコインを初めとした暗号資産(仮想通貨)の取引や送金データを正しくブロックチェーンにつなぐための仕組みです。
PoWは、ビットコインのような管理者が存在しないブロックチェーン上において、「二重支出」を防ぐ方法として開発されました。
ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)の多くを支えるシステムは管理機関を持っているわけではありません。
そのため、間違いなく売買や送金を成立させるためには、管理機関がいなくても容易に改ざんできないような仕組みが必要となります。
PoWでは、マイナーという人達によって、ブロックに繋がれた取引の記録や承認、管理が行われています。
PoWを採用したブロックチェーンで最も有名なのは、紛れもなくBitcoinです。
2009年に誕生したBitcoinは分散型デジタル暗号通貨の分野を開拓し、現在は時価総額において明確なトップの座についています。
・「PoS」Proof of Stake(プルーフ・オブ・ステーク)
PoSは、PoWの代替システムにあたるものであり、アルトコインで初めて導入されました。
プルーフ・オブ・ステーク(=掛け金の証明)という言葉のとおり、その暗号資産(仮想通貨)に対する掛け金、すなわち仮想通貨を多くそのネットワークに預け入れている参加者の中から、処理を承認する人を選出する、というコンセンサスアルゴリズムです。
PoSのルールの中で選出された参加者は正しく処理承認を行うことで、その仮想通貨を報酬として受け取ることができます。
預け入れた仮想通貨と、受け取った仮想通貨の価値が失われてしまわないよう、参加者が正しく承認を行うインセンティブを生み出し、不正のない取引や処理を行う仕組みになっているのです。
イメージとしては、PoWは保有する計算パワーである仕事量(Work)が大きい人ほどブロック承認の成功率が高いことに対して、PoSは資産保有量(Stake)が大きい人ほどブロック承認の成功率が高くなっています。
ブロックチェーンネットワークを支えるP2P
ブロックチェーンのネットワークにはP2P(Peer to Peer)と呼ばれる方式が用いられています。
P2Pとは、誰とでも直接的に接続できるという通信方式の一つです。
ファイルを共有するツールなどで有名になり、今や誰もが使用しているSNSアプリ「LINE」の通信方式としても利用されています。
P2P型では、ノード(ンピュータ)同士が直接繋がることで通信しており、そのため、サーバやデータベースといった機器は存在しません。そのため、外部からの攻撃から強いことです。もし攻撃を受けたとしても、サービスが止まることはありません。これを「ゼロダウンタイム」と呼んでいます。
P2Pネットワークを利⽤してブロックチェーンデータを共有し、管理者を必要とせずにシステムを維持することを実現しているのです。
長年にわたり、ブロックチェーン技術は、増大するアプリケーションのニーズを満たすために進化・拡大してきました。
最も人気のあるものは、ビットコイン、イーサリアム、ポリゴン、ソラナ、カルダノです。
ここでは、より人気のあるブロックチェーンについて簡単に解説します。
Bitcoin(ビットコイン)
ビットコインは世界で初めて実装された最初のブロックチェーンであり、暗号資産の中では世界で最もメジャーで、時価総額も第1位の状態が続いています。ビットコインブロックチェーン上で扱われるトークンを「BTC 」と言います。
ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る正体不明の人物が書いたホワイトペーパー「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」に基づいて開発された、世界初の暗号資産です。
「政府や中央銀行のような特定の機関ではなく、不特定多数の有志たちによって、ネットワークを管理する」という設計思想を持っていたサトシ・ナカモトは、それを実現するためにビットコインにブロックチェーン技術を導入しました。
2009年に運用が開始されたビットコインは、現在では、商品を購入する際の決済手段として利用されるほか、取引所を介して円やドルなどの様々な法定通貨と交換することが可能です。
決済通貨としての側面を持ちながらも価値の保存手段として利用されることも多く、インフレの激しい国などでは自身の財産の保全のために利用されるケースも見られています。
Ethereum(イーサリアム)
人気と時価総額で第2位の暗号通貨イーサリアムは、2013年に当時19歳であったにヴィタリック・ブテリン氏によって作られました。イーサリアムブロックチェーン上で扱われるトークンを「ETH」と言います。
イーサリアムの最大の特徴は、スマートコントラクト機能を備えた分散型アプリケーションプラットフォームです。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上であらかじめ決められた設定によって、自動的に契約実行されるシステムのことです。
このスマートコントラクトにより取引を自動化することで、管理者を必要とせず、自立して稼働するアプリケーションの構築も可能となっています。
ビットコインは価値の交換や保存に便利な存在で、イーサリアムは独自ソフトウェアを開発できるOSのようなプラットフォームである点が大きな違いです。
しかし、近年ではスケーラビリティ問題(ユーザ-増加によってネットワーク全体の処理能力を低下させていること)との指摘もあり、また、高騰するガス代は、サービス提供者にとっても大きな問題です。
Polygon(ポリゴン)
もう一つ、特筆すべきブロックチェーンはPolygonです。
2017年10月にMaticNetworkとして立ち上げられた後、開発者は2021年の初めにポリゴンとしてブランド名を変更しました。
イーサリアムのセカンドレイヤーとして互換性を保ちつつ、かつ、高速処理ができて低コストなシステムを実現しています。
イーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題の解決策の一つとして存在しており、イーサリアムに接続することでシステムをサポートしています。
トランザクション(取引)スピードが早くコストが低いため、市場の注目を集めています。
Polygonはイーサリアムのセカンドレイヤーですが、イーサリアムからは独立したコンセンサスアルゴリズム(PoS)を有しており、独自トークンのMATICも発行しています。
Solana(ソラナ)
ソラナは2017年より開発がスタートし、2020年3月に正式に公開されました。
ソラナブロックチェーン上で扱われるトークンを「SOL」と言います。
急速に開発・利用が進んでいる数々のブロックチェーンアプリケーションを、高い性能によって支えることを目的としたブロックチェーンプラットフォームです。
機能面で過去にないほど優秀で、イーサリアムキラーと称されるほどです。2021年には価格が急騰し、年初の約126倍となり、さらなる関心を集めています。
小規模なトレーダーから機関投資家まで幅広い層に支持されています。
ソラナのユニークな特徴の1つは、革新的なハイブリッドコンセンサスアルゴリズムを採用していることです。
ブロックチェーンの基礎となるPoS(Proof-of-Stake)と組み合わせたPoH(※プルーフ・オブ・ヒストリー)を導入することで、スケーラビリティ問題の向上を目指しています。具体的な処理性能は、イーサリアムの数百倍とする意見もあるため、性能の高さは十分伺えます。
※プルーフ・オブ・ヒストリーとは
プルーフ・オブ・ヒストリーは、すべてのコンピューターが取引について通信したり、合意したりせずに、分散型ネットワークのコンピューター間で時間を記録するために設計されています。
もう一つの特徴は、WebAssemblyまたはWASMをはじめとして多くのプログラミング言語に対応している点です。
この機能により、プログラマーはSolana上での開発を容易に行うことができます。
柔軟性の高いバーチャルマシンの開発が進められ、今後も多くのプログラミング言語に対応する予定とのことです。
Cardano(カルダノ)
カルダノは2015年に元イーサリアムの開発者であるチャールズ・ホスキンソン氏によって作られました。
2021年の8月25日には、暗号資産取引所BITPOINTが日本で初めてエイダコイン(ADA)の取扱いを開始したことで注目を浴びました。
カルダノブロックチェーン上で扱われるトークンを「ADA」と言います。
ADAはスイスのカルダノ財団が運営する「カルダノ(Cardano)」というプラットフォーム上で利用できる仮想通貨ですが、他にも様々な用途があるため、将来性を期待されています。
ひとつ目の特徴はカルダノの承認アルゴリズムである「ウロボロス」です。
ウロボロスでは、ブロックチェーンの承認にPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を用いています。
その目的は、ブロックチェーンの承認方法をPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)へ変更することです。
PoSでは特定の条件によって承認作業の権限が与えられるため、PoWのような膨大な計算が必要なく、消費電力が少なく済みます。
環境面に配慮されているとされ、現代に適した暗号資産としてエイダコインは認知されています。
もう一つの特徴は、Haskellプログラミング言語を使っていることです。
Haskellは関数型プログラミング言語で、安全性とセキュリティに優れていることで知られています。
まとめ
今回は仮想通貨のベースとなる技術である「ブロックチェーン」について解説しました。
ビジネス業界で最も注目されているブロックチェーンは、仮想通貨以外にも、ゲームや不動産・金融など、あらゆるジャンルでの活用が期待されています。
急成長したブロックチェーンの技術は、企業の決済サービスの運用など将来さまざまなサービスに大きなメリットをもたらすでしょう。
今後さらに普及していけば、仮想通貨を利用する機会はさらに増えるかもしれません。
複雑な仕組みのブロックチェーンですが、どのような発展を遂げるかは工夫次第であり、無限の可能性を秘めていると言えそうです。
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